認知症の方に代わって成年後見人が相続放棄手続きを進める
神奈川県 T.S様
息子が鉄道事故で亡くなってしまいました。 T様のご子息が鉄道事故で他界。 T様と奥様についてはご子息が亡くなられて間もない状況であったため、相続放棄の手続きはスムーズに着手させていただくことになりました。 民法843条 今回、T様に成年後見人制度のご説明をさせていただいたところ、T様が後見人候補者として家庭裁判所に申立を行うこととなり、T様ご夫婦の相続放棄手続きと並行してS様の成年後見人選任の申立てのご依頼を頂戴することになりました。
賠償請求の恐れがあり、現状ではいくら請求されるかが分かっておりません。
そのため、相続人全員で相続放棄の手続きを進めたいと思っています。
しかし、私達夫婦が相続放棄をした場合、私の両親が次の相続人になりますが、母は認知症を患っているため、自身で相続放棄の手続きを行うことが出来ません。
また、母にはある程度の資産があるため相続放棄をすることが出来なければ、母の資産を減らしてしまう恐れがあります。
どのように手続きを進めていけば良いものか、息子を亡くしたばかりで混乱しており何とか手続きをお手伝いしてもらえないでしょうか?ご相談内容
最初の相続人となるのはT様と奥様のお二人。
T様と奥様が相続放棄を行った場合に、次の相続人にあたるT様のご両親の内お母様であるS様は重度の認知症を患っておられました。
S様には老後のたくわえとして約5千万円ほどの資産があるが、鉄道会社からの賠償請求がいくらになるか不明であり、多額の請求をされた場合、S様の資産を減少させてしまうことになる点を懸念されておられました。
T様ご家族はとても仲の良いご家族関係であったため、突然にご子息を亡くされ憔悴しきった様子でご相談をいただきました。相続放棄相談センターへ相談された結果
T様が懸念されておられたS様については、認知症を患っておられたため、法律上本人で相続放棄手続きをすることが出来ません。
そのためS様が相続放棄をするためには、まず家庭裁判所に申立を行い成年後見人を選任する必要があります。
後見人が選任された場合に、その後見人がS様に代わって相続放棄の手続きを行うことになります。
後見人には親族がなることもできますが、司法書士や弁護士などの専門家が選任されることもあります。
通常、相続放棄の手続きは、「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」(熟慮期間中)に申立てを行わなければなりませんが、認知症の方において「相続の開始があったこと」を認識することは困難であるため、成年後見人が選任された時点から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
成年後見制度とは
認知症などの理由で、意思・判断能力を喪失してしまっている方に代わり法律行為をしたり、本人がしてしまった不利益な契約を取り消したりする役割を担う人を選任し、本人(成年被後見人)が不利益を被ってしまわないように、被後見人の財産を守り、必要な手続きを代理で行うことが出来るようになります。
しかし、注意が必要なのは、一度成年後見人が選任されると、基本的には認知症である本人が亡くなるまで、その役割は終えることが出来ないと言うことです。
1家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
2成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
3成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
4成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
結果、T様ご夫婦の相続放棄が認められたあと、S様について無事T様が後見人として選任され、S様に代わって相続放棄の申立てを行うことができ、問題なく相続放棄が受理されることとなりました。