固定資産税の相続放棄はできる?|突然納税通知が届いた場合の対処法とは

ある日突然、固定資産税の納税通知書が届き、被相続人が所有していた土地などの不動産の存在を知ったという方から、「固定資産税を支払いたくないので、相続放棄をしたい」というご相談をいただくことは多いです。
この場合、相続放棄により固定資産税の支払いを回避することは可能ですが、既に相続放棄の期限を超えているケースが多いため、原則として相続放棄は認められません。現状や経緯を丁寧に説明した申述書を作成すれば裁判所に相続放棄を認めてもらえる可能性がありますが、難易度が高いため、期限を超えた相続放棄の実績を豊富に持つ専門家に依頼することが大切です。
この記事では、相続放棄により固定資産税の滞納分を含めた支払いを回避する方法、市役所や町役場から届いた固定資産税に関する通知書を放置するリスク、相続放棄した場合のメリットとデメリットなどについて解説します。
【目次】
2.相続放棄により固定資産税の滞納分を含めた支払いを回避する方法
(1)固定資産税の滞納が100万円を超えていたご相談者様のエピソード
3.市役所や町役場から届いた固定資産税に関する通知書を放置するリスク
(1)年またぎで相続放棄をした場合、土地の固定資産税の支払い義務はありますか?
(2)相続放棄後に固定資産税を請求された場合はどうすればいいですか?
(3)滞納している固定資産税の支払い義務を相続放棄によりなくすことは可能ですか?
(4)先祖の名義のままになっている土地は相続放棄できるのでしょうか?
1.固定資産税に関する基礎知識
まずは、固定資産税について最低限知っておきたい基本的な事項を説明します。
(1)固定資産税とは
固定資産税とは、土地や建物などの不動産や、会社が所有する償却資産などの固定資産に課される税金です。税収は、地域の公共サービスやインフラ整備に充てられます。
(2)固定資産税の納税義務者は?
固定資産税の賦課期日(課税要件を確定する日)は1月1日です。そのため、固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日時点に、自治体が管理する固定資産課税台帳に所有者として登録されている人です。年度の途中で所有権移転があっても、1月1日時点の所有者に1年分の納税義務があります。
固定資産課税台帳に登録されている所有者が死亡した場合は、所有者の相続人が納税義務者となります。市区町村が独自に調査を行い、相続人を推定し、固定資産課税台帳に登録します。
毎年4月から6月頃に、納税義務者宛てに納税通知書が送付されるので、納税通知書を受け取ってはじめて、相続した不動産の存在を知る方もいらっしゃいます。
2.相続放棄により固定資産税の滞納分を含めた支払いを回避する方法
納税通知書が届いても、相続放棄をすることにより、固定資産税の滞納分を含めた支払いを回避することができます。固定資産税の支払いから逃れるために、実家の土地建物、山林、田畑の相続放棄をしたいというご相談を受けたときのエピソードをご紹介し、具体的な解決方法について説明します。
(1)固定資産税の滞納が100万円を超えていたご相談者様のエピソード
私は4人兄弟の三男で、農業を営んでいた父親は5年前に亡くなりました。
私は若くして上京し、あまり帰省はしていませんでした。
父親の相続財産は僅かなお金と、買い手の到底付きそうにない実家の土地建物、山奥の山林や田畑などがあったようですが、実家を出てしばらく経つため、詳細はよく知りませんでした。
また、長男である兄が稼業を継いでおりましたので、そういった事は全て兄に一任している状況でした。
しかし、相続手続きは未完了のまま何年間も放置していたようで、十数年経ったある日、私の元に町役場から固定資産税の納税義務承継通知書が届きました。確認したところ、固定資産税の滞納があり、その金額が100万円を超えていました。私は、遠方に住んでいるため、実家の土地建物や山林、田畑を必要としていませんし、財産自体もいらないと考えています。
その固定資産税の支払から逃れるために、不動産の相続放棄をしたいと考えていますが、この場合、どのような対応をすればよいのでしょうか。
(2)相続放棄による解決策
このご相談者様が、固定資産税の支払いから逃れる方法として考えられるのは、相続放棄をすることです。
相続放棄をすれば、滞納していた固定資産税を含め、全ての遺産についての相続権を放棄できます。
ただし、以下の場合は原則として相続放棄の申し立てが認められません。
・熟慮期間である3ヵ月の期限を過ぎている場合
・遺産の処分など、単純承認とみなされる行為をした場合
ご相談者様の場合は、熟慮期間を大幅に超えているため、相続放棄は難しいですが、以下のような条件を満たせば例外的に認められる可能性があります。
【熟慮期間を経過した相続放棄の申し立てが例外的に認められる条件】
・相続放棄を希望する原因となる遺産の存在を知らなかった
・知らなかったことについて正当な理由がある
・その財産の存在を知ってから3ヵ月以内に申し立てをした
上記の条件を満たした場合でも、裁判所に認めてもらうには、状況や経緯について丁寧に説明する必要があります。熟慮期間を過ぎた相続放棄の手続きは難易度が高いため、一般的な弁護士や司法書士に依頼しても断られる可能性があります。そのため、熟慮期間を過ぎた相続放棄を成功させた実績を豊富に持つ専門家に相談することが大切です。
こちらでは、当事務所が熟慮期間を過ぎた相続放棄の手続きを成功させて固定資産税の滞納分の支払いを回避できた事例を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
(3)相続放棄以外の解決方法
相続放棄以外で固定資産税の支払いを逃れる方法として、遺産分割協議を行い、他の相続人に権利を譲るという方法があります。
このご相談者様の場合は、お父さんの遺した実家の土地建物や山林や田畑は要らないという意思表示をして、相続人(兄弟)間で遺産分割協議書を作成して、他の相続人(兄弟)に譲ることになります。
ただし、相続人全員の合意が必要になるため、相続人の関係性によっては、話し合いがまとまらない、長期化するといった事が懸念されます。
また、あくまでも原則は遺産分割協議が成立するまでに発生した固定資産税については各相続人に納税義務がありますので、市町村から請求された場合には支払わなくてはなりません。したがって、遺産分割協議においては、権利を譲り受ける相続人が、協議前の固定資産税を含めて負担することについて、協議案として盛り込むことを検討するようにしましょう。
3.市役所や町役場から届いた固定資産税に関する通知書を放置するリスク
市役所や町役場から、固定資産税の納税通知書や納税義務承継通知書などが届いたら、何もしないまま放置するのは危険です。
何より、通知が届いてから3ヶ月以内が例外的に相続放棄が認められる最後のチャンスとなりますので放置するということは単に相続放棄を諦めることになります。
また、手続きをせず放置している間に、相続人のひとりがさらに亡くなってしまうと、その相続人に対して新たに相続が発生することになります。たとえば、相続人の兄弟が死亡した場合ですと、その妻子が新たに共有者となるため、相続人の間の権利関係が複雑化して争いが起きやすい状態となります。
上記のご相談者様のケースのように、相続人のどなたも固定資産税を払っていない状態が続くと、役所は相続人の資産から税金の回収を図ろうとします。そうなると、ご自身の給与や自宅が差し押さえられ、最悪の場合、自宅を失う可能性も出てきます。
このような深刻なリスクを避けるためにも、お早めに相続問題に詳しい相続放棄相談センターの専門家にご相談ください。
4.固定資産税を相続放棄した場合のメリットとデメリット
相続放棄した場合のメリットとデメリットについて具体的に説明します。
(1)メリット
固定資産税の支払いや不動産の管理義務など、負担が大きい遺産の相続を回避できます。
不動産は、所有しているだけで固定資産税を毎年支払う必要があります。
更に、使っていなくても、適切に管理・維持する義務が生じます。
相続放棄をすることで、このような費用負担や手間から解放されます。
また、被相続人に借金や滞納していた税金があった場合には、借金の支払い義務から解放されます。
(2)デメリット
相続放棄をすると、不要な土地や借金、滞納していた税金だけでなく、すべての財産を相続することができなくなります。
遺産の中に価値のある土地や建物・預貯金や株式があっても、相続放棄をした場合はこれら一切を放棄することになりますので、遺産の総額によっては放棄しない方が良いケースもあります。
また、相続放棄をすると原則的に取り消し・撤回することができません。
相続放棄をしたあとになってから、価値のある遺産が見つかったり、気が変わって相続したくなったりしても、やり直しはできません。
5.相続放棄と固定資産税に関するよくある質問
相続放棄と固定資産税に関するよくある質問に回答します。
(1)年またぎで相続放棄をした場合、土地の固定資産税の支払い義務はありますか?
相続放棄をした場合には、土地や建物の所有者にはならないため、本来、固定資産税の納税義務は発生しません。
しかし、12月に相続放棄の申述をして、翌年1月に裁判所に受理されたなど、年をまたいで相続放棄が完了した場合、相続放棄をしたにもかかわらず、固定資産税を負担しなければなりません。
前述したとおり、固定資産税は毎年1月1日時点で所有権者が支払わなくてはなりません。
年をまたいだ場合、1月1日時点では相続放棄が完了しておらず、固定資産税課税台帳に登録されているため、支払い義務が残るのです。
相続放棄などの事情に関わらず、1月1日で固定資産課税台帳に登録されている人に課税するこの考え方を台帳課税主義といいます。
実際の対応は市町村によって異なりますので、上記に該当する場合は注意しましょう。
(2)相続放棄後に固定資産税を請求された場合はどうすればいいですか?
①いったん立替払いをして、後から求償をおこなう
固定資産税の納税通知が届いた場合には、たとえ相続放棄をした場合であっても、固定資産税を納付しなければなりません。
支払わなかった場合、財産の差し押さえに至るケースもあるので要注意です。
こうして支払った固定資産税は、実際に相続した人に固定資産税相当額を求償することが可能です。この権利を「求償権」といいます。
②登記名義の変更を行う
翌年以降に固定資産税の納税通知書が届かないようにするため、登記名義の変更(所有権更正登記または所有権抹消登記)を行いましょう。
(3)滞納している固定資産税の支払い義務を相続放棄によりなくすことは可能ですか?
結論からいうと可能です。
被相続人が亡くなる前に滞納していた固定資産税は相続の対象であるに過ぎません。
そのため、相続放棄をすることで、被相続人が死亡前に滞納していた固定資産税の納税義務はなくなります。
相続をする場合には、滞納していた固定資産税は納付しなければなりません。
その場合、延滞金がかかってしまうので早めに納税を済ませた方が得策です。
なお、固定資産税の請求は、被相続人の死後、かなりの時間が経ってから届くことがあります。
固定資産税の請求を機に相続放棄をしたいと考えた場合、相続放棄の申請期限(相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)を超えてしまっていることも多いかと思います。
亡くなってから3ヶ月を超えている場合には、期限越えの相続放棄手続きの実績が多数ある専門家への依頼がおすすめです。
期限越えの相続放棄手続きは事務所によっては依頼を断られてしまうような難易度の高い事例です。
専門家が裁判所へ現状や経緯を丁寧に説明しないと却下されてしまうこともあります。
一度却下されてしまうと再申請はできませんのでご注意ください。
(4)先祖の名義のままになっている土地は相続放棄できるのでしょうか?
こういったケースの場合、相続が発生した際に、相続放棄で土地を手放すという選択ができます。
ただし、相続放棄をすると、土地以外の財産もすべて相続できなくなります。
他の財産は相続して、不要な土地や建物の相続だけを放棄することはできません。
なお、ご先祖の名義のままになっている不動産は、そのままにしていると後々問題が生じるかもしれません。
ご先祖の名義のままでは抵当権の設定や売却ができませんので、その不動産を利用・売却する場合は名義変更(相続登記)が必要です。
こういったケースでは、ご先祖の代からの相続関係の証明が必要となります。
古い名義であれば、相続人は雪だるま式に増え、権利関係が複雑になっています。
遠縁の親戚にあたる相続人を調査し、面識のない親族と話し合いが必要となる場合もあります。
また、複数の相続が発生している場合は、どの被相続人についての相続放棄が必要となるか専門的な知見が必要となります。
放置するほど子孫に迷惑がかかりますので、相続が発生した際は速やかに登記を完了させることをおすすめいたします。
(5)遺産から固定資産税を支払ってしまった場合はどうなりますか?
固定資産税を遺産から支払うと、相続放棄ができなくなってしまいます。
相続人が相続財産の一部でも処分すると、相続の単純承認をしたとみなされるからです。
固定資産税は相続財産にかかる税なので相続財産から支払いたくなるのは自然なことですが、相続放棄を希望する場合は、相続財産から支払いをしないように注意してください。
6.固定資産税や相続放棄に関する悩みは専門家に相談するべき
相続放棄や登記の手続は自分でも出来ますが、確実に進めるためには専門家に相談するべきです。
専門家に依頼するメリット、依頼した場合の費用や期間の目安について説明します。
(1)専門家に依頼するメリット
専門家に依頼をすることで、ご自身の主張が認められる可能性を高くすることができます。
特に、相続放棄はチャンスが一度しかありません。
ご自分で相続放棄手続きをして、「失敗したので専門家に頼もう」といったことはできません。
相続放棄などの手続きには、法律の専門知識が必要になります。知識の無いまま判断し、手続きを進めるのは危険です。
専門家は、以下のような相続の悩みも的確に解決してくれます。
・相続関係が複雑な場合
・本当に相続放棄するべきかの判断
・相続財産の全体像の調査
・必要となる書類が不明
・法務局が遠方にあり自分で手続きするのが大変
・土地を売却するので相続登記を急ぐ場合
・親族その他、周りに迷惑をかけたくない
また、固定資産税には、さまざまな軽減税率や優遇措置もあります。
固定資産税の負担を軽減させることで相続放棄をせず、不動産を有効利用できる道があるかもしれません。
こういったものを有利に利用するにも、専門家は強い味方です。
相続のお悩みはぜひ、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみてください。
(2)専門家に依頼するとどのくらいの費用がかかるのか?
通常の相続放棄の手続き関係を専門家に依頼すると、相場は3~10万円程度です。
相続開始から3ヶ月を超えている相続放棄の手続きなど、難易度の高い依頼の場合は10~20万円以上がかかる場合もあります。
また、登記の名義変更を司法書士に依頼する場合は、費用の相場は1件あたり15万~30万程度です。
手続きの内容や難易度によって違いがあるので、正確な費用を知りたい場合は各専門家の事務所に問い合わせが必要です。
なお、弁護士事務所よりも司法書士事務所の方が費用を抑えられる傾向にあります。
相続人同士で争いがない場合には、司法書士への依頼がおすすめです。
(3)専門家に依頼するとどのくらいの期間がかかるのか?
通常の相続放棄であれば、申立てから受理されるまでにかかるのは約1ヶ月程度です
手続きの内容や難易度によって違いがあるので、期間についても各専門家の事務所に問い合わせが必要です。
まとめ
固定資産税の請求を機に土地の存在を知り、相続放棄を考える場合は相続放棄の申請期限を超えているケースが多いです。
こういった被相続人が亡くなってから3ヶ月を超えているケースでは、期限越えの相続放棄手続きの実績が多数ある専門家へ依頼しましょう。
一度却下されてしまうと再申請はできませんので、経験の乏しい専門家に依頼するのは避けた方がよいでしょう。
相続放棄をしていても、固定資産税の納税通知が届いてしまうケースがあります。
この場合、納税義務を免れるのは困難です。期日までに税金を納めなければなりません
しかし、相続放棄をしているのであれば、本来は負担する義務はないので、支払った固定資産税は真の所有者に対して求償することができます。









