『自分で相続放棄手続き』することお考えの方へ
当センターに日々寄せられる相続放棄のお問い合わせの中には「自分で相続放棄手続きをしようと思っている」という方もいらっしゃいます。
被相続人(お亡くなりになった方)がご両親などで、借金や連帯保証などの負債がなく、被相続人の婚姻関係が複雑でない場合は戸籍の収集などもさほどかからず、すんなりと手続きができる場合もあります。
ご自身で相続放棄手続きをされる方の多くは費用面からご自身でお手続きをしようとお考えの方が多いようです。
ですが、当センターに寄せられるご相談の中には、
「自分で相続放棄手続きを申し立てたが、裁判所からの質問状にどのように返答したら良いか?」
「相続放棄は認められたが、自分の想像した結果とは違い、困った状況になってしまった」
など、ご自身で相続放棄手続きをしたことを後悔しているお話をお伺いすることもございます。
相続放棄手続きは申立て後、裁判所から届く照会書(裁判所からの質問状)ついて的確に返答をする必要があり、書き方によっては相続放棄が認められないケースもございます。
一度「相続放棄が認められない」と決定してしまいますとよほどの理由が無い限りは取り消すことはできません。
ご自身で相続放棄をする方はどのようなことを気を付けるとよいか、また、ご自身で相続放棄手続きをしてお困りになる事例なども含めて詳しく解説致します。
【目次】
1.相続放棄は自分でしようとする方が多いのが現状
⑴手間取らずに相続放棄手続き申し立てが出来る場合もある
御両親がご逝去され、相続人となる経験をされる方は多いと思います。
この場合、相続順位が第一順位となり、お亡くなりになったご両親の婚姻関係が特別複雑でなければ戸籍の収集はそこまで手間取らないかもしれません。
しかし、戸籍を収集してみて初めて分かることもあります。
例えば、会ったこともない兄弟(異母(父)兄弟)の存在が判明したという事実が判明することもあるのです。
また、裁判所へ提出する相続放棄申述書の作成に手間取ってしまい期限が迫り、慌ててご相談にいらっしゃるお客様もいらっしゃいます。
<参考:相続放棄の手続き方法|申請期限や流れなど詳しく解説>
⑵3ヶ月期限越え・単純承認事由のある場合は自分で手続きは難しい
相続放棄手続きを申し立てる期限は、相続人になったことを知ってから3ヶ月以内です。
原則、3ヶ月を超えての相続放棄は認められません。
ですが、
「亡くなったのは3ヶ月以上前だけど、最近負債があると通知が届いたので放棄したい」
などという場合は相続放棄できる可能性があります。
しかし、被相続人様(お亡くなりになった方)の財産の受け取りや名義変更などの手続きをしている場合は相続をしていることみなされてしまい(単純承認事由)、原則相続放棄が認められません。
このように、期限を越えている場合や単純承認事由とみなされるような行為をしている可能性がある場合、相続放棄手続き申立てや、申し立て後の裁判所からの質問状には丁寧に説明をしなければ却下されてしまう可能性が高いのです。
一度相続放棄手続き申し立てが却下されてしまうと、原則、再申請が認められませんので十分注意しなくてはいけません。
このように、相続放棄手続きは裁判所へ申し立てをする法的な手続きになりますので、ご自身でお手続きせずに専門家へ依頼することをおすすめ致します
《参考:相続放棄の期間が過ぎても対応策はあります》
2.第三順位の相続人や代襲相続の場合は戸籍収集に時間がかかる
相続放棄を申し立てる際、ご自身が相続人であるということの証明のために戸籍等が必要です。
① | 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) ※相続順位によって必要な範囲は異なります。 |
② | 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) |
③ | 相続放棄をする人の戸籍謄本 |
その他にも郵券や申述書も必要となりますが、相続放棄手続きを申し立てる際の必要書類で一番手間取る作業は戸籍収集でしょう。
相続放棄手続きに必要な戸籍は被相続人との関係が遠くなるほど複雑になり、また、代襲相続や養子縁組など発生している場合なども収集に手間がかかります。
確実に間違いなく戸籍収集をするためにも、専門家へ依頼すると良いでしょう。
⑴第三順位の方は戸籍収集大変な手間がかかる
第一・二順位の相続人が相続放棄済みの場合や既に死去している場合、第三順位(被相続人の兄弟)へ相続権が移ります。
第一・二順位の方に比べて、第三順位の方の場合は被相続人の相続人であると証明できる戸籍の量は多くなるため大変手間がかかります。
自身で必要な戸籍を全て取り寄せるのはとても骨の折れる作業になるため、司法書士事務所などに依頼される方がほとんどです。
⑵代襲相続が発生している場合
「代襲相続」とは、相続人となる予定の人が被相続人よりも前に亡くなっている場合や、廃除・欠格で相続権を喪失している場合、その相続人となる予定だった人の子供が相続人となる事です。
代襲相続の場合は、被相続人の戸籍に加えて、以下戸籍が必要になります。
① | 被代襲者の出生から死亡までの戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本) |
② | 代襲相続人全員の戸籍(戸籍謄本、戸籍全部事項証明書) |
※第一順位の相続人の代襲相続の場合、再代襲に注意!※
代襲相続人となる予定の人が、被相続人や相続人が亡くなる前にすでにお亡くなりになっている場合や、廃除・欠格で相続権を喪失している場合は「再代襲」といい、代襲相続が発生します。
第三順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹や甥姪)の場合は再代襲はありません。
3.自分で相続放棄手続き申立て後、困る場合がある
ご自身で相続放棄申し立てをした後、裁判所へ照会書を記述の仕方が分からなかったり、相続放棄が認められた後に様々なトラブルが生じ困り果て、ご相談をいただくことがあります。
申立て前の場合は当センターでご相談・お手伝いできるのですが、裁判所へ申し立てた後ではこちらで相続放棄手続きを代行させていただくことが難しくなっております。
相続放棄手続きの申立は一度きりの手続きになりますので、確実に相続放棄が認められるためにも専門家へ依頼することをおすすめいたします
⑴照会書の書き方が分からない
相続放棄を家庭裁判所へ申し立てると「照会書」「回答書」が送られてきます。
照会書と回答書が一緒になっている場合もあり、家庭裁判所によって様式は様々ですが、質問される内容はほとんど同じ内容になります。
照会書には申述人に対して今回の相続放棄の申述についていくつか質問が記載されており、それについての回答を回答書に記入して決められた提出期限までに裁判所へ返送しなければなりません。
この照会書の書き方によっては相続放棄が認められない場合があります。
⑵裁判所から呼び出しが来ることがある
相続放棄申立て理由の記述内容が不十分であったり、申し立てる理由・内容に不審な点がある場合、稀に裁判所から呼び出される場合があります。
呼び出し期日においては、様々な質問が調査官からなされる可能性があり、その質問について事情をしっかりと口頭にて回答する必要があります。万が一、その回答に相続放棄を認めるにあたり疑義の生じる内容があれば放棄が認められない可能性があります。
⑶申立てて却下された場合、再申請ができない
ご自身で相続放棄を申し立てた場合、照会書などの記述内容等不備があり却下される場合があります。
却下されますと、2週間以内に管轄の家庭裁判所経由で高等裁判所へ即時抗告という手続を行う事ができますが、実際には高裁で決定が覆ることはなかなかありません。
また、一度却下されてしまうと相続放棄自体の再申請は認められませんので、この場合はもはや相続放棄はできず、相続財産に含まれる負債を背負ってしまうことになってしまいます。
このような事態に陥らないためにも相続放棄手続きの実績のある専門家に依頼することをおすすめします。
⑷相続放棄が認められ次順位に相続権が移ると、トラブルの可能性
相続放棄によって相続権が移った場合、その事を事前に当事者へ知らせていないとトラブルになる事があります。
次順位側の立場からすれば、疎遠であまり付き合いのない親戚の相続人に突然なった上で、更には相続財産にマイナスの財産があるわけですから当然といえます。親戚とはいえ何の説明もなく、突然自分が作ったわけでもない借金を背負わなければならないことを良いと思う方はいらっしゃらないでしょう。
ご自身が相続放棄することによって相続人となってしまう次順位の方には、事前に手紙や電話などでお知らせをするなど、極力迷惑がかからないようにしましょう。
当センターでは、事前に相続放棄の専門家が相続関係をしっかりとお伺いし、お客様の意向に沿った解決プランをご提案しております。
当センターでは次順位の相続人様へご連絡差し上げるサ―ビスもございます。
⑸不動産の相続放棄は要注意!
相続放棄をしたい財産の中に不動産がある場合は借金などと違い、次に引き継ぐ人が決まるまで自身の持ち物と同様に保存する義務が生じる可能性があります。
2023年4月から施行された改正民法により、相続放棄後に法律上の義務を負うケースは不動産を「現に占有」している場合に限定されましたが、「現に占有」の解釈が明確ではないという点には注意が必要です。
売却できるような不動産であればよいのですが、老朽化した家屋や辺鄙な田舎の土地など資産価値が低く売却できないような場合はいつまでも引継ぎ手が現われないかもしれません。
そのような状況が長期間継続する場合には、建物の老朽化による最低限の修繕や土地においては除草、伐採など過大な負担がかかる可能性もあり、自身だけでなく家族にとっても大変な負担となります。
不動産が含まれる相続放棄を検討の場合は専門家へ相談し、ご自身や他の相続人に負担がかからない方法を検討しましょう。
《参考:お客様の声(112):祖父母名義の空き家の通知が届き、困って相談しました ➜ 》
4.相続放棄は1度きりの手続き!相続放棄の専門家へ
⑴相続放棄手続きに詳しくない司法書士や弁護士もいる
相続手続きを依頼する先として司法書士や弁護士があげられます。
ですが、それぞれ得意とする専門分野がありますので、司法書士や弁護士だからと言ってすべての法務手続きの経験があるとは限りません。
実際、当センターへは他の弁護士事務所や司法書士事務所から断られた相続手続きのご相談が寄せられ、当センターにてお手続きさせていただき解決している事例も多々あります。
《参考:相続放棄の基礎知識:『不動産(土地・空き家)は相続放棄できるのか?』 ➜ 》
《参考:お客様の声(115):他事務所で断られた40年前の相続放棄が認められました ➜ 》
⑵相続放棄でなく限定承認が適しているケースも
相続放棄を検討する理由として、
① | 相続財産に負債がある |
② | 相続したくない不動産(空き家など)がある |
③ | 疎遠な親族の相続に関わりたくない |
などの場合などがあげられます。
相続放棄を申し立て認められた場合、第一順位・第二順位の場合は次順位に相続権が移りますが、限定承認手続きの場合は現在の相続人全員で手続きをとることで、次順位に移らずに相続手続きが終了します。
相続財産に負債があったとしても相続放棄ではなく限定承認手続きを選択することで、以下事例のように円満に相続手続きが完了する場合も多くございます。
《参考:相続放棄と限定承認の違い ➜ 》
⓵次順位に相続権を移さずに、現在の相続人だけで解決したい場合
【事例⓵-1】
父親が死亡し、配偶者(常に相続人)と子(第一順位)が相続放棄をした場合、第二順位である祖父母や曽祖父母が相続人になってしまう。高齢のため心配をかけたくない。また、曾祖父は認知症気味のため相続手続きが困難である。
→限定承認手続きを申し立て認められた場合、祖父母や曽祖父母へ相続権が移らずに相続手続きは終了します。
限定承認の場合、通常の相続とは違いプラスの相続財産以上の債務を引き継ぐ事はありませんので実質相続放棄と同様の効果を出すことが可能です。
【事例⓵-2】
父親が死亡し、配偶者(常に相続人)と子(第一順位)が相続放棄をした場合で第二順位の祖父母がすでに死亡している場合、第三順位である叔父叔母へ相続権が移り迷惑をかけることになってしまう。
→限定承認手続きを申し立てて認められた場合、第三順位である叔父叔母へ相続権が移らずに相続手続きは終了します。
⓶相続財産に負債があるが、自宅不動産だけは手放したくない場合
【事例⓶】
死亡した夫に借金があることが判明。だが、自宅は家族の思い出もあるため手放したくない。
→限定承認手続きを申し立て認められた後、先買権を行使をして不動産を買い戻すことで自宅を手放さずにすみます。
また、プラスの相続財産以上の債務を引き継ぐ事はありませんので通常の相続より大幅に負担を減らすことが可能です。
⓷被相続人が事業をしており、事業承継したい場合
【事例⓷】
事業をしていた夫が亡くなり、配偶者である妻が引き継ぎたいと思っているがプラスの遺産だけでなく負債がある可能性がある。相続放棄をしては自社株も相続できず、事業継続ができないので相続放棄は避けたい。
→限定承認手続きを申し立て認められた後、先買権を行使して自社株を買い戻すことで事業を継続することができます。
また、プラスの相続財産以上の債務を引き継ぐ事はありませんので万が一隠れた債務が後日発覚しても不測の事態を避けることが可能です。
限定承認とはどのような手続きか?詳しく知りたい方はこちら⇒
※当事務所運営の別サイト「限定承認相談センター」が開きます
このように、相続財産に負債があったとしても相続放棄が認められることで全て解決するというわけではありません。
負債相続から逃れることはできますが、限定承認手続きがよい場合もありますし、場合によっては相続人間で話し合って遺産分割協議書を作成し、負債も含めて相続することが最終的に良い判断である場合もございます。
私ども相続放棄相談センターでは、初回の無料面談にて丁寧にご事情をお伺いしまして、専門家よりお客様にとって最適なご提案をさせていただいております。
相続放棄と限定承認は1度きりの手続きです。
ご自身で手続きをされて思いもよらぬ結果になる事のないように、ご自身で判断せずにまずは当センターへご相談下さい。